こんにちは、「みたレポ」管理人です。
今回は2025年春の劇場版最新作『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』をネタバレなしでレビューしていきます。
公開前から「隻眼の犯人」「記憶と時間」「コナン史上最も切ない結末」など、さまざまなキーワードがSNSを賑わせていましたが、実際の内容は想像以上に“深い”作品でした。
この記事では、あらすじや登場キャラクター、見どころ、そして観賞後に残る余韻について、ネタバレを避けながらじっくり紹介します。
🎬 作品情報
- タイトル:名探偵コナン 紺青の残像(フラッシュバック)
- 公開日:2025年4月12日(全国ロードショー)
- 上映時間:約110分
- 主題歌:King Gnu「余白」
- 監督:永岡智佳
- 脚本:櫻井武晴
なお、劇場版コナンとしては28作目。前作『黒鉄の魚影』でシリーズは興行収入記録を更新しましたが、今作は“静と記憶”をテーマにした異色のミステリーとして語られています。
🧩 あらすじ(ネタバレなし)
舞台は春の横浜・みなとみらい。大型開発が進む街で、ある日突如として起きた不可解なビル爆破事件。現場には「片目の仮面をかぶった人物」が監視カメラに映っていました。
一方、蘭の様子がどこかおかしい。ある記憶が、断片的に彼女の中に蘇り始めていたのです。
そんな中、コナンは少年探偵団とともに調査を開始。やがて事件の背後には、20年前のある事故と都市伝説“残像の時計塔”が関係していることが判明していきます。
記憶を失った少女、隻眼の人物、そして時計が止まったままの空間——。
コナンが追いかけるのは、真実か、それとも誰かの心に焼きついたフラッシュバックか。
🔍 感想:情報ではなく“記憶”を追うミステリー
本作はこれまでの劇場版コナンと比べて、アクション控えめ、テンションも落ち着きめ。その代わりに、過去と現在が交錯する“感情系ミステリー”として非常に丁寧に作られています。
特筆すべきは時間の演出。時計の針、反転した映像、フィルム風の回想シーンなど、視覚的にも「記憶の揺らぎ」を表現する工夫が凝らされていました。
また、今作の見どころのひとつは蘭とコナン(新一)という関係性にもう一度フォーカスしていること。2人の絆が強調される場面はあえて台詞を控えめにして、“静かに泣ける”構成になっています。
そして今回の“犯人像”にも注目。ネタバレは避けますが、彼/彼女の背景には自責・喪失・歪んだ正義が絡んでおり、単なる悪役では終わらせていません。
「何が正しく、何が間違っていたのか」——観客それぞれが答えを持ち帰るような、余白のあるミステリーに仕上がっていました。
🎧 主題歌「余白」との絶妙なシンクロ
主題歌はKing Gnu「余白」。これが驚くほど映画と調和しています。
特にラストシーン、そしてエンドロールに入るタイミングの“入り方”が完璧。音と映像が一体となって、まさに“余白”に意味を与えるような終わり方でした。
歌詞の一部は「真実と嘘の隙間にある、あなたの輪郭」といったような内容で、まさに本作が描く「記憶の不確かさ」「過去の輪郭」を象徴しています。
コナン映画=ハイテンポ主題歌というイメージを持っている方には意外かもしれませんが、静かなエンディングで心を締めくくるこの選曲は非常に秀逸です。
後半では、物語の真相、隻眼の犯人の背景、そして「隻眼の残像」の意味についてネタバレありで掘り下げていきます。
🧨 ※ここからネタバレあり!
本作の核心に迫る部分を含みますので、未視聴の方はご注意ください。
🕵️♂️ 犯人の正体と動機:残像に取り憑かれた男
犯人は、みなとみらい再開発の裏側で長年追われる立場だった元建築士・東堂圭吾(仮名)。彼は事故で視力を失い、隻眼となった後、都市計画の「切り捨てられた地区」に暮らしていた人物です。
東堂の動機は「都市の整備の裏で犠牲になった人々の記憶を、街に刻み込むこと」。つまり、彼が起こしたビル爆破事件や監視カメラの“残像演出”は、ただの復讐ではなく、街に“記憶”を残すためのアート的なテロでした。
時計塔の停止、映像を逆再生させる演出、時間が歪むようなカットインなど、事件の構造自体が「過去への執着=残像」を象徴しています。
また、犯人が残した「君たちは街の時間を奪った」という台詞は、本作のテーマを象徴する一言でもあります。
👩❤️👨 コナンと蘭の関係性:回想ではない“現在”
中盤で明かされるのが、蘭の記憶に混ざり込んでいたのは“彼女自身が忘れていた事故”であること。
幼い頃、爆破事故に巻き込まれた蘭は一時的に記憶を失い、その記憶が大人になった今、街の再開発をきっかけにフラッシュバックしていたのです。
その事故で助けてくれた少年が、のちの工藤新一だった——という伏線が回収されるシーンでは、筆者も思わず静かに泣いてしまいました。
つまり本作は、「新一と蘭の絆」が単なる過去の思い出ではなく、命と記憶で繋がれていたという新たな描き直しを提示したと言えます。
コナンが言葉少なに「だから、今こうしていられる」と告げるシーンは、台詞の少なさがむしろ深く胸に刺さる印象的な場面でした。
🎬 映像と演出:静と動のコントラストが美しい
今回の監督・永岡智佳さんは、これまでの劇場版コナンと異なり、「静」の場面を意識的に多く取り入れている印象でした。
派手なアクションを控え、建物の影や空の色、街の静けさを巧みに取り入れることで、物語全体に“残像感”を与えています。
特に印象的だったのは、爆破された旧時計塔跡地をコナンと蘭が見下ろすシーン。音楽が流れず、ただ風の音だけが響いている静かな数秒間に、観客自身の記憶を揺さぶる演出がありました。
また、回想シーンでフィルム調の加工を入れる、カメラがわずかにブレることで不安定さを演出するなど、映像的にも“記憶の不確かさ”を体感させる技術が光っています。
🔍 総評:「爆破のない劇場版コナン」はありか?
率直に言って、本作は“いつものコナン映画”を期待している人には、やや物足りなさを感じるかもしれません。
爆破の数も少なく、アクションシーンは控えめ。ジンや黒の組織も出てこない。スケボーやサッカーボールで無双するコナン君も、ほぼ見られません。
しかし、それでもこの作品は記憶・再生・喪失と向き合う非常に文学的な劇場版でした。
個人的には、「いつもと違うからこそ、この作品が印象に残る」という逆転の魅力があったと感じています。
劇場版コナンの中では異色ながら、“挑戦”としては非常に価値ある一作でした。
⭐ 評価
おすすめ度:
内容評価:
84点/100点
コナンの映画はどの作品も非常に出来が良くオススメできますが、今作もコナンのランキング歴代TOP10入りするぐらいの出来です。
私は既に2回見に行きましたが、余裕があれば3回目も見に行く予定です。